2024年10月8日
今年のノーベル生理学・医学賞に、ヒトの遺伝子の働きを制御することができるマイクロRNA分子を発見した米マサチューセッツ大のVictor Ambros教授とハーバード大Gary Ruvkun教授の2人が選ばれました。マイクロRNAはヒトや動物など多細胞生物の受精卵からの発生や成長に関わっているほか、その異常はがんや脳神経疾患などに深く関与していることも明らかになってきています。Ambros教授らは、線虫から、たんぱく質作りに直接関わらない小さなマイクロRNAを発見し、特定のたんぱく質の発現を抑制していることを解明しました。現在、マイクロRNAは1000種類以上見つかっており、ヒトでも同様の仕組みで多くの遺伝子発現を制御していることが判明しています。選考委員会は「ヒトを含む多細胞生物にとって不可欠である、遺伝子制御の全く新しい原理を明らかにした。生命体がどのように発達し、機能するかにおいて、『マイクロRNA』は根源的に重要であることが証明されつつある」と説明しています。
Press release: The Nobel Prize in Physiology or Medicine 2024 – NobelPrize.org
2024年7月17日
みどりの食料システム戦略を実現するための法制度である「みどりの食料システム法」が、農林水産省を主管省庁として令和4年7月1日に施行されました。農薬に関しても、2030年までに「ヒートポンプ等の導入により、省エネルギーなハイブリッド型園芸施設を50%にまで拡大」、「化学農薬使用量(リスク換算)を10%低減」、「化学肥料使用量を20%低減」が中間目標として設定されています。
・みどりの食料システム法について:農林水産省
・みどりの食料システム法(環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律
(令和4年法律第37号))(条文)
・みどりの食料システム法の概要
・みどりの食料システム法の認定制度等について(令和6年7月)
2024年6月3日
すでに臨床適用されている糖尿病治療薬のSGLT2阻害薬に、老化細胞を除去する作用があることが、順天堂大学のグループにより明らかにされました(2024.5.30)。これに関連して、SGLT2阻害薬については、慢性腎臓病以外にも 慢性心不全、心血管疾患、アルツハイマー病等の様々な加齢関連疾患への適応拡大が加速されることが期待されます。
・臨床応用可能な老化細胞除去薬の同定に成功|ニュース&イベント|順天堂大学
・Chronic Kidney Disease and SGLT2 Inhibitors: A Review of the Evolving Treatment Landscape
・Effects of SGLT2 Inhibitors on Kidney and Cardiovascular Function
・Kidney and heart failure outcomes associated with SGLT2 inhibitor use
・Role of DPP-4 and SGLT2 Inhibitors Connected to Alzheimer Disease in Type 2 Diabetes Mellitus
2024年5月2日
「マイクロバイオーム」とは、ヒトの体に共生する微生物(細菌・真菌・ウイルスなど)の総体のことです。これらの微生物が消化器・皮膚、口腔、鼻腔、呼吸器、生殖器など人体が外部環境に接するあらゆる場所には、それぞれ特徴的な微生物群集が常在しています。特に腸に生息する細菌(腸内細菌叢)は約1,000種類、約100兆個といわれています。近年の研究からヒトマイクロバイオームが健康や疾患に密接に関係することが次々と明らかになってきており、医薬の分野でもニューモダリティとして扱われるようになっています。既に腸管感染症の領域ではSER-109(Seres Therapeutics)、RBX2660(Rebiotix/ Ferring)、VE303(Vedanta Biosciences)がPhase 3に入っているほか、消化器系疾患、がん免疫療法、代謝性疾患、アレルギー疾患、精神・神経系疾患など、広範囲な領域で多くの細菌製剤の開発が進められています。
・マイクロバイオーム関連医薬品(細菌製剤)の開発状況等について
・Microbiome-based therapeutics
・マイクロバイオーム研究に基づいた細菌製剤に関する報告書
・腸内マイクロバイオーム制御による 次世代創薬技術の開発
・Safety and Tolerability of SER-109 as an Investigational Microbiome Therapeutic in Adults With Recurrent Clostridioides difficile Infection:
A Phase 3, Open-Label, Single-Arm Trial
・Efficacy and Safety of RBX2660 in PUNCH CD3, a Phase III, Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Trial with
a Bayesian Primary Analysis for the Prevention of Recurrent Clostridioides difficile Infection
・VE303, a Defined Bacterial Consortium, for Prevention of Recurrent Clostridioides difficile Infection: A Randomized Clinical Trial
2024年4月2日
近年の科学的知見を踏まえて「感染症予防ワクチンの非臨床試験ガイドライン」及び「感染症予防ワクチンの臨床試験ガイドライン」が改訂されました(2024年3月27日付)。改訂ガイドラインでは、現時点における科学的知見に基づく基本的考え方をまとめたもので、学問上の進歩等を反映した合理的根拠に基づいたものであれば、必ずしもガイドラインに記載した方法を固守するよう求めるものではないとされています。また、遺伝子組換え技術やバイオテクノロジーの進歩に対応すべく、感染症の予防を目的とした遺伝子組換えウイルスワクチンの開発に関するガイドラインの同日 発出されました。このガイドラインは、組換えウイルスワクチンの円滑な開発促進を目的に、品質、有効性及び安全性の考え方・留意点をまとめたもので、感染症予防ワクチンに関するガイドラインを補完するものと位置付けられています。
・「感染症予防ワクチンの非臨床試験ガイドライン」について(改訂)
・「感染症予防ワクチンの非臨床試験ガイドライン」に関する質疑応答集(Q&A)
・「感染症予防ワクチンの非臨床試験ガイドライン」に関する意見募集の結果
・「感染症予防ワクチンの臨床試験ガイドライン」について(改訂)
・「感染症予防ワクチンの臨床試験ガイドライン」に関する質疑応答集(Q&A)
・「感染症予防ワクチンの臨床試験ガイドライン」に関する意見募集の結果
・「感染症の予防を目的とした組換えウイルスワクチンの開発に関するガイドライン」について
2024年2月7日
特定の細胞に対して選択的に働きかけるよう“プログラミング”したmRNA(STX-001)による新たな固形腫瘍治療の臨床試験開始が米国で承認されたようです(2004.1.22)。このmRNAは、コンピュータコードのように “プログラミング”され、あるタイプの細胞でのみ、特定の時間に、特定の分量だけ機能するように設計されています(a multi-mechanistic synthetic self-replicating mRNA)。万一、意図した目標以外の細胞に到達した場合は、mRNAに自己破壊しろという命令が出される遺伝子回路になっているので、影響が及ぶのは腫瘍のある範囲にとどまるとされています。
Strand Therapeutics Receives IND Clearance for Programmable mRNA Therapy STX-001 to Treat Solid Tumors (BioSpace)
Strand Therapeutics Receives IND Clearance for Programmable mRNA Therapy STX-001 to Treat Solid Tumors (Business Wire)
Strand Therapeutics given clearance for solid tumour drug trial (clinicaltrialsarena.com)
2024年1月4日
海外で開発された、「レプリコンワクチン」と呼ばれる、新型コロナウイルスに対する新しいタイプのmRNAワクチンが、11月28日、国内で承認されました。「レプリコンワクチン」は「「自己増幅型ワクチン:Self-amplifying Vaccines」とも呼ばれ、接種した新型コロナウイルスのmRNAが体内で複製される新たな技術を使っているので、少量(現行のmRNAワクチンと比べて10~100分の1程度の接種量)で効果が⾧続きすると言われています。そのため、短期間で日本全人口分の製造が可能となることと、副反応が低減されることが期待されます。
Self-amplifying RNA vaccines for infectious diseases (nature.com)
RNA Vaccines: A Suitable Platform for Tackling Emerging Pandemics? (frontiers)
An Update on Self-Amplifying mRNA Vaccine Development – PMC (nih.gov)
2023年11月29日 更新
海外で開発された、「レプリコンワクチン」と呼ばれる、新型コロナウイルスに対する新しいタイプのmRNAワクチンが、11月28日、国内で承認されました。「レプリコンワクチン」は「「自己増幅型ワクチン:Self-amplifying Vaccines」とも呼ばれ、接種した新型コロナウイルスのmRNAが体内で複製される新たな技術を使っているので、少量(現行のmRNAワクチンと比べて10~100分の1程度の接種量)で効果が長続きすると言われています。そのため、短期間で日本全人口分の製造が可能となることと、副反応が低減されることが期待されます。
Self-amplifying RNA vaccines for infectious diseases | Gene Therapy (nature.com)
Frontiers | RNA Vaccines: A Suitable Platform for Tackling Emerging Pandemics? (frontiersin.org)
An Update on Self-Amplifying mRNA Vaccine Development – PMC (nih.gov)
2023年10月27日 更新
COVID-19 mRNAワクチンが成功したことで、mRNAプラットフォームが他の感染症だけでなく、がんにも拡大できる可能性が明らかになりました。複数の製薬企業が、標的腫瘍に対する免疫反応を誘発できるネオエピトープ(患者個人の遺伝子変異を由来とする抗原決定部位)をコード化した個別化mRNAワクチンに開発に挑戦しています。一方では、多くのがん研究がmRNA治療法に焦点を当ててきており、既に多岐にわたる候補薬が臨床開発段階にあります。より安全性と効果を高めるためのmRNAの修飾技術やmRNAベースの治療薬とワクチンの開発状況のレビュー等の論文報告が続いています。
・mRNA-Based Vaccines – PubMed (nih.gov)
・Messenger RNA-Based Therapeutics and Vaccines: What’s beyond COVID-19? – PubMed (nih.gov)
・Opportunities and Challenges in the Delivery of mRNA-based Vaccines – PubMed (nih.gov)
・mRNA cancer vaccines: Advances, trends and challenges – PubMed (nih.gov)
・How mRNA Vaccines Might Help Treat Cancer – NCI
・Comb-structured mRNA vaccine tethered with short double-stranded RNA adjuvants maximizes cellular immunity for cancer treatment – PubMed (nih.gov)
2023年7月12日 更新
最近、抗原原罪(original antigenic sin) という耳慣れない言葉を目にするようになりました。元々は、インフルエンザウイルスに関して提唱された概念で、最初に免疫を獲得した後に感染した変異ウイルスに対する抗体産生が抑制される現象のことを言います。コロナワクチンにおいても同様の現象が起きると、新規変異株に対する追加接種を行っても武漢型スパイクタンパク質に対する抗体が産生されるだけで、変異が進んだウイルスには免疫系が対応できなくなることが想定されます。一部ではそのような事実が確認されたとの報告もあり、改めて注目されています。
・Original Antigenic Sin: How First Exposure Shapes Lifelong Anti-Influenza Virus Immune Responses – PubMed (nih.gov)
・Immune imprinting, breadth of variant recognition, and germinal center response in human SARS-CoV-2 infection and vaccination – PubMed (nih.gov)
2023年1月10日 更新
新しい害虫防除法として、RNA干渉(RNAi)法を利用した防除法(RNA農薬)が注目されています。RNA農薬は、二本鎖RNAを害虫種に投与し、RNAiを誘導することで、内在遺伝子の機能を阻害して害虫の駆除を目指すものです。RNA農薬で使われる人工遺伝子は狙った害虫だけに効果を起こし、他の動植物に影響を与えにくいことから、従来の化学農薬に比べて安全性が高く、耐性をもった害虫が現れにくいと考えられています。既に、OECDによりRNA農薬実用化のガイドライン策定会議が開かれており、2030年頃までには実用化される見通しです。
・Environmental Fate of RNA Interference Pesticides: Adsorption and Degradation of Double-Stranded RNA Molecules in Agricultural Soils –
PubMed (nih.gov)
・Summary of Discussions From the 2019 OECD Conference on RNAi Based Pesticides – PMC (nih.gov)
・https://www.oecd.org/officialdocuments/publicdisplaydocumentpdf/?cote=env/jm/mono(2020)26&doclanguage=en
・既存の化学農薬に比べ安全性が高いと期待されるRNA農薬。2030年頃までに実用化の可能性。 | アグリの樹 (agrinoki.com).
2022年10月10日 更新
近年、PROTAC (PROteolysis TArgeting Chimeras、タンパク質分解誘導キメラタンパク質)と呼ばれる、標的分子によってタンパク質分解を誘導する新しい技術が、癌を含む様々な疾患に応用可能な新しい低分子薬の創薬モダリティとして注目されています。この技術は、標的タンパク質の部位とE3ユビキチンリガーゼを認識する部位を利用してハイブリッド分子を作り、標的タンパク質を特異的にノックダウンするもので、伝統的な低分子医薬やバイオ医薬でアプローチ可能なプロテオームは約20%にとどまる一方で、標的タンパク質分解技術により残り約80%のプロテオームへアプローチが可能になるといわれています。既に2品目が第2相試験に進んでいます。
・The PROTAC technology in drug development – PubMed (nih.gov)
・PROTAC targeted protein degraders: the past is prologue – PubMed (nih.gov)
・PROTAC: An Effective Targeted Protein Degradation Strategy for Cancer Therapy – PubMed (nih.gov)
・section3-1.pdf (nihs.go.jp)
・新しい低分子薬の創薬モダリティPROTAC (jst.go.jp)
2022年8月10日 更新
mRMAワクチンは新型コロナウイルス感染症(Covid-19)との戦い方を一変しただけでなく、「mRNA医薬」という新たな創薬モダリティを確立しました。今後は新たなコロナ変異株に対してだけでなく。インフルエンザやRSウイルス感染症といった他の感染症に対するワクチンの開発、さらにがんや遺伝子疾患を治療するmRNA医薬の開発が加速すると思われます。
・mRNA vaccines and treatments: beyond COVID-19. Nature
・Huff AL et al. Messenger RNA vaccines for cancer immunotherapy: progress promotes promise.
J Clin Invesr 132:e156211, 2022.
・Zogg H et al. Current Advances in RNA Therapeutics for Human Diseases.
Int J Mol Sci 23:2736, 2022.
2022年4月1日 更新
リアルワールドデータ(RWD)は調剤レセプト、保険者、電子カルテデータなど、臨床現場で得られる診療行為に基づく情報を集めた医療ビッグデータです。既に新型コロナウイルス感染症(Covid-19)治療薬の開発に際して活用されています。医薬品開発における活用について、FDAやEMAだけでなくPMDAから説明資料が発表され、ICHでもM14として取りまとめが進められています。
・FDA. Data Standards for Drug and Biological Product Submissions Containing Real-World Data –
Guidance for Industry (Draft), Oct 2021.
・EMA. EMA Regulatory Science to 2025 – Strategic Reflection. EMA, March 31, 2020.
・藤原康弘. PMDAにおけるリアルワールドデータ(RWD)活用推進に向けた取組み. 第7回臨床開発環境
整備推推進会議, 2021年3月8日.
・梶山和浩. 安全性評価においてRWDを活用した薬剤疫学調査の計画・デザインに関する一般原則
(仮題), 第44回ICH即時報告会, 2021年12月22日.
2022年2月22日 更新
新型コロナウイルス感染症(Covid-19)への対処方法は、ワクチンによる予防から軽症者への経口治療薬に軸足が移ってきています。VOVID-19治療薬として、昨春以降レムデシビル、免疫抑制剤、中和抗体が順次上市され,昨年末には経口剤のモルヌピラビルが,今月に入ってパクスロビドも承認され、目覚ましい展開を見せています。いつ感染してもおかしくない今般の状況において、治療薬(特に自宅療養で使用する可能性の高い経口治療薬)の特性や対象症状等を科学的・客観的に理解し、最新の情報を把握しておくことの有用性は高いと思います。
・COVID-19に対する薬物治療の考え方 第13.1版(2022年2月18日) (一般社団法人日本感染症学会)
・Fact sheet for healthcare providers_emergency use authorization for PaxlovideTM. FDA, Dec 22, 2021
2021年9月24日 更新
今年のノーベル生理学・医学賞は新型コロナ感染症の治療の切り札として使われているmRNAワクチン開発の母といえるKatalin Karikóらが有望視されています。mRNAを治療に用いるアイデアは1990年代からありましたが、mRNAは異物として認識されて強い炎症反応を引き起こしました。開発のブレイクスルーとなったのは、mRNAにシュードウリジンを導入して異物として認識されないようにする2005年に発表された論文です。最新情報ではありませんが、日本人だけでなく世界中の人々が恩恵を受けたインパクトの大きい論文です。
・Karikó K, et al. Suppression of RNA recognition by Toll-like receptors: the impact of nucleoside
modification and the evolutionary origin of RNA. Immunity 23: 165-175, 2005.
2020年11月10日 更新
SARS-CoV-2 の感染拡大に “ニューロピリン1” というヒト細胞表面にあるタンパク質が一役買っているらしいという報告が別々の研究グループから発表されました。新薬開発の切り口になるかもしれません。
・Daly JL, et al. Neuropilin-1 is a host factor for SARS-CoV-2 infection. Science. 2020 Oct 20;eabd3072.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33082294/
・Cantuti-Castelvetri L et al. Neuropilin-1 facilitates SARS-CoV-2 cell entry and infectivity.
Science. 2020 Oct 20;eabd2985. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33082293/
2019年4月1日 更新
腎毒性の早期評価のための非臨床biomarkerが提案されているています。in vivoに加えて,miRNAやin vitroも含む内容となっています。
・McDuffie JE. Brief Overview: Assessment of Compound-induced Acute Kidney Injury Using Animal Models,
Biomarkers, and In Vitro Platforms. Toxicol Pathol 46:978-990, 2018.
2019年2月1日 更新
この冬話題となっている新インフルエンザ治療薬“ゾフルーザ”についての臨床開発論文です。ゾフルーザの特徴を理解するに役立つ論文です。
・Hayden FG, et al. Baloxavir marboxil for uncomplicated influenza in adults and adolescents.
N Engl J Med379:913-923, 2018.
・Koshimichi H, et al. Safety, tolerability, and pharmacokinetics of the novel anti-influenza agent
baloxavir marboxil in healthy adults: Phase I study findings.
Clin Drug Investig 38: 1189-1196, 2018.
2018年12月1日 更新
今年度のノーベル生理学・医学賞を本庶佑教授(京都大学)とJP. Allison教授(米テキサス大)が受賞されました。本庶先生はPD-1、Allison先生はCTLA-4を発見し、これらの免疫チェックポイント分子ががんを攻撃する免疫系に「ブレーキ」として働く仕組みをつきとめられました。これによりそのブレーキを解除する抗体を抗がん剤として開発する新たな道が開かれました。Nauture.Comでは「Collection 01 October 2018 Nobel Prize in Physiology or Medicine 2018」と題して、両先生の代表的な論文を紹介しています。
・Okazaki T, Chikuma S, Iwai Y, Fagarasan S, Honjo T. A rheostat for immune
responses: the unique properties of PD-1 and their advantages for clinical application.
Nat Immunol 14:1212-1218, 2013.
・Sharma P, Wagner K, Wolchok JD, Allison JP. Novel cancer immunotherapy agents with
survival benefit: recent successes and next steps. Nat Rev Cancer 11:805-812, 2011.
2018年8月1日 更新
胎生期の化学物資やストレス曝露が生後の脳神経発達に及ぼす影響に関する総説が発表されています。
St-Cyr S, McGowan PO. Adaptation or pathology? The role of prenatal stressor type and intensity in the developmental programing of adult phenotype. Neurotoxicol Teratol 66:113-124, 2018.
2018年6月1日 更新
ついにステロイド剤と併用可能なアトピー皮膚炎を適応とした抗体薬“デュピルマブ”が開発されました。
de Bruin-Weller M et al. Dupilumab with concomitant topical corticosteroid treatment in adults with atopic dermatitis with an inadequate response or intolerance to ciclosporin A or when this treatment is medically inadvisable: a placebo-controlled, randomized phase III clinical trial (LIBERTY AD CAFÉ)
Br J Dermatol 178: 1083-1101, 2018
再ミエリン化に関する最近の知見が報告されています。
Franklin RJM, Ffrench-Constant C. Regenerating CNS myelin – from mechanisms to experimental medicines. Nat Rev Neurosci 18:753-769, 2017.
ヒト脳発達についてイメージング研究結果をまとめた総説です。
Gilmore JH, Knickmeyer RC, Gao W. Imaging structural and functional brain development in early childhood. Nat Rev Neurosci 19:123-137, 2018.
金属の発達神経毒性発現におけるエピジェネテックな機序についてのまとめが報告されています。
Raciti M, Ceccatelli S. Epigenetic mechanisms in developmental neurotoxicity. Neurotoxicol Teratol 66:94-101, 2018.
発癌過程おけるチェックポイント・シグナル伝達についての総説が報告されています。
Spranger S, Gajewski TF. Impact of oncogenic pathways on evasion of antitumour immune responses. Nat Rev Cancer 18:139-147, 2018.
海馬は記憶や空間ナビゲーションなど種々の機能を担うことが知られていますが、不安に関わる細胞の存在が報告されています。
Jimenez JC et al. Anxiety Cells in a Hippocampal-Hypothalamic Circuit. Neuron 97:670-683.e6, 2018.
2018年4月1日 更新
化粧品、家庭用品、化成物、農薬、医薬品の皮膚感作性試験について、各国規制当局の要求状況のまとめが報告されています。
Daniel AB et al. International regulatory requirements for skin sensitization testing. Regul Toxicol Pharmacol 95:52-65, 2018.
皮膚感作性試験の標準化に関する代替試験法国際協力(ICATAM=International Cooperation on Alternative)のポシションペーパーが報告されました。
Casati S et al. Standardisation of defined approaches for skin sensitisation testing to support regulatory use and international adoption: position of the International Cooperation on Alternative Test Methods. Arch Toxicol 92:611-617, 2018.
2018年2月1日 更新
麻酔薬の神経毒性(発達神経毒性)に関する総説がNeurotoxicology and Teratology誌に掲載されていますので紹介します。
Walters JL, Paule MG Review of preclinical studies on pediatric general anesthesia-induced developmental neurotoxicity. Neurotoxicol Teratol 60:2-23, 2017.
Levy RJ. Carbon monoxide and anesthesia-induced neurotoxicity. Neurotoxicol Teratol 60:50-58, 2017.
Zanghi CN, Jevtovic-Todorovic V. A holistic approach to anesthesia-induced neurotoxicity and its implications for future mechanistic studies. Neurotoxicol Teratol 60:24-32, 2017.
Lin EP et al. Do anesthetics harm the developing human brain? An integrative analysis of animal and human studies. Neurotoxicol Teratol 60:117-128, 2017.
2017年12月1日 更新
今年9月に米国でキムリアKymriah”という世界初のCAT-T(キメラ抗原受容体T細胞)療法として知られる新種の治療薬(遺伝子療法の一種)が発売されました。小児・若年成人の急性リンパ性白血病(ALL)患者の8割以上で効果を示したとされる画期的新薬です。
No authors listed. Tisagenlecleucel (Kymriah) for ALL. Med Lett Drugs Ther. 59: 177-178, 2017.
膨大な毒性試験成績を集積したデータベースを使って毒性予測モデルを構築する試みが始まっています。
López-Massaguer O et al. Generating modelling data from repeat-dose toxicity reports. Toxicol Sci 254, 2017.
アルツハイマー型認知症の患者から作ったiPS細胞を使い、発症の原因物質を減らす薬の組み合わせを見つけたと、京都大などの研究チームが発表しました。
Kondo T et al. iPSC-based compound screening and in vitro trials identify a synergistic anti-amyloid β combination for Alzheimer’s disease. Cell Reports, 21: 2304–2312, 2017.
2017年10月1日 更新
ここ10年来、オートファジーは新規治療薬の開発の標的として注目されてきましたが,未だに創薬には至っていません。
Galluzzi et al. Pharmacological modulation of autophagy: therapeutic potential and persisting obstacles. Nat Rev Drug Discov 16: 487-511, 2017.
2017年8月1日 更新
体重の調節は視床下部のシグナル伝達を中心に研究されてきましたが、前脳基底部のコリン作動性神経が関わる結果が報告されています。
Herman AM et al. A cholinergic basal forebrain feeding circuit modulates appetite suppression. Nature 538:253-256, 2016.
シンシナチ水迷路を用いた自己中心的な学習について発表されています。
Vorhees CV, Williams MT. Cincinnati water maze: A review of the development, methods, and evidence as a test of egocentric learning and memory. Neurotoxicol & Teratol 57:1-19, 2016.
薬理試験や毒性試験に用いる検定手法について簡潔にまとめられています。
中西展大.検証的薬効薬理試験における検定手法の選択,日薬理誌 150:10-15,2017.
長鎖ノンコーディング RNAが新規バイオマーカーおよび毒性応答の主要な調節因子であるという認識が高まりつつあります。
Dempsey JL, Cui JY. Long non-coding RNAs: A novel paradigm for toxicology. Toxicol Sci 155:3-21, 2017.
発がんにおけるKeap1とNrf2のバランスについての総論です。
Pandey P et al. The see-saw of Keap1-Nrf2 pathway in cancer. Crit Rev Oncol Hematol 116:89-98, 2017.
フェノバルビタールのCAR誘導に関する総説です。
Negishi M. Phenobarbital meets phosphorylation of nuclear receptors. Drug Metab Dispos 45:532-539, 2017.
25年以上にわたり「がん原性試験」のあり方について方向性を示してきたS.M. Cohenから現状の総括ともいえる論文が発表されました。
Cohen SM. The relevance of experimental carcinogenicity studies to human safety. Current Opinion in Toxicology 3: 6–11, 2017.