過去、わが国の仁果類における農薬残留基準値設定にかかる分析部位は国際標準や諸外国と異なっていたため、国際的なリスク管理上の整合性に欠ける可能性がありました。具体的には、りんご、日本梨および西洋梨に関する国際標準の分析部位は全果実(果梗を除く全果実)であるのに対し、わが国は可食部(花落ち,芯および果梗の基部を除去したもの)を分析部位としていました。下記の論文では6 種の代表的な農薬を処理したりんご、日本梨及び西洋梨の残留農薬試験を実施し、全果実、可食部および全果実換算(可食部と、除去した花落ち、芯および果梗の基部の分析値から換算)の残留値間には統計的な有意差は認められないことを明らかにしました。この結果に基づいて、設定された残留基準値を変更することなく、国際標準の分析部位への変更が2017年に行われました。
矢島智成等
国産仁果類における分析部位の取り扱いが農薬残留濃度に与える影響
日本農薬学会誌 39:1-9, 2014.
食品中の残留農薬分析や食品安全を扱った論文においてQuEChERS法をよくみかけます。「Quick, Easy, Cheap, Effective, Rugged, and Safe」の頭文字を取ったもので、クエッチャーズ法と呼ばれ、迅速かつ簡便に分析サンプルを前処理できることが特徴となっています。以下の論文では、Anastassiadesらの最初の報告(オリジナル法)とAOAC法、CEN法を含めたQuEChERS3法と、日本の改良法(大阪法、STQ法)について簡潔に紹介しています。
永井 雄太郎
QuEChERSを見直してみよう
日本農薬学会誌 37:362‒371, 2012.